大野智への呪い

今夜の約束はキャンセルした。じっとしていられず自転車に飛び乗り、DANGAN-LINERを聞きながら氷点下の街を駆けた。こんな幼い声の頃から、ここまで活動してきた。
途中でなぜかミスドに寄ってドーナツを6つ買った。さらに走っているとMonsterが流れ出した。いつも側にいてくれたね。2008年頃から。一度も会ったことはなくても、音楽を通じて。どのテレビ番組よりもアルバムを介して。リリースを楽しみに待つ、会えないスーパースターだ。
涙が出てきた。悲しさでも悔しさでもない。責める気持ちなんか少しもない。同じ気持ちの何百万人と今、どこかで集まってダンスフロアを占拠したい。全員で踊りまくりたい。
帰宅してSong for meを聞き、Take Me Farawayを聞き、ダンスが見たくなってTOP SECRETを再生した。ファンも業界の人たちも、大野は隠居すると思っているだろう。私もそうだ。でも「活動休止は方向性の違いゆえ」「アイドルの生ぬるい音楽に愛想が尽きた」と言って、ソロアーティストとして猛然と活動し始めたら、それも最高だな。こんなに才能のある人がステージを離れて生きていけるのかな。


TOP SECRETは、大野にかけられた呪いを私に知らしめた。


自由な生活、いいだろう。嵐のことなんて知らないふうを装った3つ年下の女性と結婚するのもいいだろう。釣りを楽しみ、真っ黒になり、アイドルの面影もなくなる。解放された幸せな毎日。


しかし、音楽とダンスの神様は、お前を決して放しはしない。


スポットライトのもとで生きる感覚を、あなたは永遠に忘れられない。光の下で歌やダンスを披露するために、その身体と存在がある。それはあなたの生まれもった才能であり、ジャムーム事務所の「一生ヒガシのように生きてしまう」呪いだ。

幸せなはずなのに、なにかが欠けているような。そんな違和感がいよいよ積もった日、妻が部屋をノックする。
コンコンコン。
「あなた、そろそろステージの時間よ」
そして妻は、離婚届を残して二人の家を去る。あのグループが活動を再開するとき、自分の存在が邪魔にならないように。
「次はコンサートで会いましょう」。