心に訴えるからアイドル
VS嵐の「台場で相葉が泣いちゃったスペシャル」、タイトルからして嫌だった。
ハワイに続き、とにかく誰か泣かせれば済むと思っているような番組の作り方が嫌だし、それにホイホイと乗せられて楽しんでしまう自分も嫌だった。
それでも私にとって忘れられない回となった。
「ここで泣けたらパーティー代を払わなくても許します」というゲームが始まり、しっかり泣き始める相葉。
予告のCMで散々涙を見ていただけに、こんな経緯だったのかと拍子抜けしたが、その後の展開は予想を超えるものだった。
「せっかく泣けたけど、ゲームを始めるという合図を出さなかったから失格です」と、コーナーのオチに向かってパスを出してくれる二宮と櫻井。
そこで「ああ、ゲーム始め、って言ってから泣けばよかった〜」と笑ってしまえば、十分コーナーは成立し、きれいに落ちただろう。
しかし相葉は
「ゲームとか関係ない」
と言った上、さらに
「ゲームなんかどうでもいいんだよ」
と重ねた。
「この場を笑いで収めよう」というパスを明確に拒否した。
二宮と櫻井が出してくれた最高のパスに乗らないなんて、どれほどの勇気だろうか。しかし、きっと相葉にとっては勇気とか決意とかを必要としない、自然な態度なのだろう。涙の理由である4人の優しさへの感謝を語ることの方が、オチよりもずっと大事なことだから。
自分でも嫌いなところだが、私はシリアスになりそうな場をすぐに茶化そうとする。それで乗り切れているつもりで、全然乗り切れていない。わかっているのに直せずにいる。
こんなふうにゲームじゃないんだと明言して、安易に落とすことを否定する。こういう相葉の姿を何度も見てきたが、一番ガツンとやられた気になった。
笑ってその場が済んでも、それで取りこぼしてしまう気持ちがある。
私は心から相葉の背中に学んだ。
こういう風になりたいと思った。
だから二宮は相葉が好きなのだとわかった。
私にはこういう姿が必要だ。誰かが誰かを思いやる姿が。嵐が休止してから、仕事で驕った態度になってしまっている気がする。週に何度か、こうありたいとか、これはよくないとか、教えてくれる人たちがいた。それを失ったことが痛い。